FATF第4次審査に向け迫られる対応、不正口座の開設・転売の手口とパターンとは
今年の10~11月に、FATFの第4次対日相互審査が迫っています。FATFの目的とこれまでの日本の対応状況、今回の審査のポイント、さらにカウリスのデータから見る不正口座の開設・転売の手口をまとめました。
1.FATFとは
「FATF(ファトフ)」は、“Financial Action Task Force”の頭文字をとった政府間機関で、マネーロンダリングやテロ資金の対策(AML/CFT)において国際的に協力・協調するために1989年に設立されました。日本では「金融活動作業部会」と呼ばれることもあります。
現時点でG7を含む35の国と地域、および2つの国際機関(EC・GCC)が加盟しています。
FATFではAML/CFTの国際基準である「40の勧告」を策定。加盟国はこれを基に自国の金融機関に対し一定の義務を課しています。さらにFATFでは、勧告への対応状況を確認するため、加盟国に対し定期的な相互審査を行っています。
2.日本(金融活動作業部会)の対応状況
前回の第3次対日相互審査が行われたのは2008年で、結果は49項目中25項目で「一部履行」または「不履行」の判定を受け「要改善」という非常に厳しい結果となりました[2]。さらに2014年には、目立った進展がなく対策が遅れているとFATFから名指して勧告を受ける事態になっています[3]。これを受け日本でも2016年、AMLの基本法律である「犯罪収益移転防止法」(犯収法)にFATF勧告の求めるリスクベース・アプローチを盛り込んだ改正を行いました。リスクベース・アプローチとは、リスクに応じた措置を講じるという考え方で、金融機関等が自ら自社のマネーロンダリングやテロ資金供与のリスクを評価し、これを低減するに見合った対策を講ずることが求められます。これまでのように、法律等で定められたルールに基づいた手続きを事務部門でこなすというだけではなく、経営層が関わってリスクを評価し対策を行うことが必要です。
さらに2018年2月に金融庁が「マネー・ローンダリング及びテロ資金供与対策に関するガイドライン」を公表。今年2019年10月~11月に迫る第4次対日相互審査に向けて、金融機関に対し「対応が求められる事項」と「対応が期待される事項」を挙げモニタリングの指針を示しています。同庁は「金融機関等及び当局の双方がリスクベースで実効的な対策を実施しているかが審査の重点」としており、金融機関等に対するモニタリングを一層強化する考えです。
3.不正な口座開設・転売を検知するカウリスの取り組み
カウリスでは従前、本人以外による「なりすまし」を検知するサービス(FraudAlert/フロードアラート)を提供しています。すでに多くの金融機関等でご利用いただきオンライン上の不審な行為を検知する中で、なりすましに加え転売が疑われる口座を発見してきました。そのため、オンラインバンキングのログインページのみならず、リスク特定を進められる金融機関のお客様において新規口座開設のページにも当社のサービスを導入いただく機会が増えています。
そこで見えてきたのが、不正な口座開設および転売が疑われる場合の2つのパターンです。
①1つの端末で複数の口座を作成している
②口座開設時と初回ログイン以降、まったく異なる環境下でログイン試行が行われる
以下は①の実例で、1つ端末による複数の口座開設が1カ月にどれくらいあったかを表しています。2回~10回以上で全体の4%近くを占めているのが分かります。
また不正な口座開設・転売を可能にする一般的な脅威として、①公署文書の偽造サイトと②金融商品の転売サイトの存在が挙げられます。これにより、実在する人間による口座の転売と、実在しない人間の口座開設が可能となり、この2つが犯罪者により一般的な手口となっています。
不正が疑われるパターンと犯罪者の手口を基に、当社では犯罪者の使用している端末を特定すべく、機能拡張とバージョンアップを進めています。同時に、お客様からの不正手口のヒアリングに基づいた手口の解析を進め、不正検知の一層の精緻化を図っています。
~FATF対応を検討されている金融機関および資金移動業者の皆さま~
カウリスでは、なりすましにとどまらず、実在しない口座もしくは転売の疑わしい口座を検知し、リスクの特定に寄与できるものと存じます。当局のモニタリングが強化される中、FATF対応を迫れている皆さまにおかれましては、ぜひ一度、情報交換および他社事例を踏まえた情報提供の機会を賜れば幸いです。当社の営業担当までお問合せください。
(文/星野みゆき 画像/© takasu – Adobe Stock)
参考:
[1] 財務省. (2017). FATF(金融活動作業部会)関連
https://www.mof.go.jp/international_policy/convention/fatf/index.html
https://www.mof.go.jp/international_policy/convention/fatf/fatf_201030.htm [3] 産経ニュース. (2014). 国際機関が初の勧告 資金洗浄の対策「日本最も遅れ」
https://www.sankei.com/economy/news/140628/ecn1406280007-n1.html [4] 金融庁. (2018). マネー・ローンダリング及びテロ資金供与対策の現状と課題
https://www.fsa.go.jp/news/30/20180817amlcft/20180817amlcft-1.pdf