2018年、車はよりコネクテッド&自動・電動化へ。サイバーリスク対策が鍵に
1.自動運転車はレベル4へ
今年に入り米国では、世界最大のテクノロジーイベント「CES」や「デトロイトモーターショー」が立て続けに開催され、世界の自動車メーカーが最新の技術を披露しています。
まず注目を集める自動運転車。昨年「レベル3」のアウディ「A8」が登場し、今年から法整備が整い次第、順次機能の提供が開始されることになっています。レベル3は、レベル2までの運転者を主体として車が運転を“支援”してくれるものとは異なり、運転の主体が車となる文字通りの“自動運転”になります。
そして今年のCESにはさらに、一定の環境下で運転者の同乗を必要としない「レベル4」の車も登場。試乗したある記者は、レベル4の車に乗ることは「(何もする必要がないため)まったくもって退屈だった」と称賛しています[1]。各社は今後数年をかけ、レベル4の本格的な導入を目指します。
2.未来の車「CASE」
さらに自動車業界の最新トレンドである「コネクテッドカー」「自動運転」「カーシェアリング」「電動化」の頭文字をとった「CASE」を体現したような車が披露され、大きな注目を浴びました。トヨタ自動車の豊田章男社長がCESの開催に先駆けプレゼンしたB2B向けの電気自動車(EV)「e-Palette Concept」です[2]。ハンドルもアクセルもブレーキもない、まさに移動する箱で、コンセプトを解説した以下の動画では「Multi-Purpose Moving Space(多目的の移動空間)」と表現されています。
移動や物流だけでなく、販売や宿泊、仕事の場などさまざまな用途に利用できる“空間”で、移動時間という概念を変えてしまいます。車を所有することなく、誰もが目的に合わせて自由に利用でき、利用や購入に鍵や財布も必要ない……e-Paletteが見せてくれるのは、まさに多くの人が思い描く未来の車像です。
3.IT企業とのコラボも
また今年のイベントには、AIの開発が進むIT企業も多く登場しコラボレーションが注目を集めました。AppleのCarPlay、AmazonのAlexaやGoogleアシスタントなどの音声アシスタントが存在感を発揮。さらに大手企業だけではなく、ITやAI、電気自動車のスタートアップやベンチャー企業も多数参加し、自動車を取り巻くプレーヤーの多様化を印象付けました。
4.自動運転車へのサイバーリスク、7割が“不安”
一方で自動車がシステムに依存するほど、IT機器と連携しクラウドでネットワークと繋がるほど、サイバー攻撃などのリスクに晒される確率は高くなります。2015年に2人の米国人ハッカーが高速道路を走る車のハッキングに成功し、遠隔で操作したことは未だ記憶に新しいでしょう。今月米国で2,201人の一般消費者を対象に行ったある調査では、67%の人が自動運転車に対するサイバーリスクに「不安がある」と答えており、「不安はない」と回答した18%を大きく上回っています[3]。
近未来の車に採用されるECUや車載LAN、インフォテインメントシステム、認証システム、さらには車と連携するスマートフォンやAI機器まで、サイバーリスクが発生するポイントはますます増加します。侵入口がどこであれ、一旦ハッキングされれば車は非常に危険な状況になり得ます。未来の車を作る新技術とともに、高い情報セキュリティが求められています。
(文/星野みゆき 画像/© chombosan – Fotolia)
参考:
[1] A, Krok. (2017). Aptiv’s self-driving BMW is totally boring. CNET
https://www.cnet.com/roadshow/news/aptivs-self-driving-bmw-is-totally-boring-ces-2018/
https://newsroom.toyota.co.jp/jp/corporate/20508200.html [3] E, Graham. (2017). Americans Concerned About Cybersecurity of Self-Driving Cars. Morning Consult
https://morningconsult.com/2018/01/18/americans-concerned-about-cybersecurity-of-self-driving-cars/