
サイバー空間/サイバースペースとは、コンピュータネットワーク内に広がる空間のことで、2011年に米国防総省は陸・海・空・宇宙空間に次ぐ「第5の戦場」であると定義。サイバー空間上の攻撃には武力を持って対峙すると宣言しています[1]。このサイバー空間で起こる国家間の争いを「サイバー戦争」と呼びます。
一国家が他の国家に対しサイバー攻撃を仕掛けたと認め、明確に国家間のサイバー戦争として記録されている事例はないものの、超国家のサイバー攻撃を疑われる例はすでに多く発生しています。
昨年行われた米大統領選にロシアがサイバー攻撃を仕掛け、干渉を試みたというニュースは記憶に新しいでしょう。アメリカ上下両院はこれに対し、ロシアへの制裁を強化する法案を可決。これに対抗しロシアのプーチン大統領は先週、ロシア国内に滞在するアメリカ政府関係者の半数以上を国外退去にすると発表するなど[2]、国家間におけるサイバー攻撃の疑惑は不穏な展開を見せています。
比較的信ぴょう性の高いサイバー戦として、古くは1990年湾岸戦争時の米軍によるイラク軍防空システムへのサイバー攻撃、1999年コソボ紛争時の米軍によるセルビア軍防空システムへのサイバー攻撃、そして2007年のイスラエル軍によるシリア空爆時のサイバー攻撃などが挙げられています[1]。
超国家のサイバー戦は、昨日今日急に発生した脅威ではなく、サイバー空間の誕生とともに現れ、インターネットの普及・活用とともに着々とその脅威を増していると言えそうです。
A.T. カーニーのマクロ経済部門シンクタンクであるグローバル・ビジネス・ポリシー・カウンシルは毎年、世界に重大な影響を与える出来事やトレンドを予測する「Year-Ahead Predictions」を発表。2017年版では、そのトップとして「主要経済圏における主要インフラへの壊滅的なサイバー攻撃が起こる」と予測しています。レポートでは、効果的に国家に混乱をきたすことのできる電気システムが最初に狙われる可能性が高いと予測。さらにターゲットとなる可能性の高い国として地政学上の観点から、アメリカ、ドイツ、湾岸協力会議の参加国、韓国に並び日本が挙げられているのです[3]。
今やサイバー攻撃への対策を抜きにして国家の防衛力を計ることは難しいと言えます。それでは、諸外国および日本政府は、現在どのような対策を講じているのでしょうか。次回は、各国のサイバー攻撃に対する現状をまとめます。
(文/星野みゆき 画像/© Adam – Fotolia)
参考:
[1] 伊東寛. (2012).「第5の戦場」サイバー戦の脅威. 祥伝社新書 [2] NHK NEWS WEB. (2017). ロシア 米政府関係者の半数以上を国外退去へ