自分の体が認証手段に!? 注目の生体認証3選
IDとパスワードを覚えずとも、「どれが犬の写真か」という問いに正解してロボットではないことを証明しなくとも、人間には生まれ持ったツールを使用して認証する方法がある。それが「生体認証」だ。生体認証とは、人間の身体的特徴(生体器官)や行動的特徴(癖など)の情報をもとにした個人認証技術であり、現在その利便性ゆえに活用の場面が広げられている。今回は、代表的なスタートアップを紹介するとともに、生体認証の最新情勢を追いかける。
生体認証のメリットとは?
近年注目が集まる生体認証。その理由はズバリ、利用者に余計な手間をとらせず認証を実現することが挙げられます。たとえばカードや鍵のような有形な認証技術では、これらの物理的なモノを認証の度に所有している必要があり、盗難や紛失のリスクがあります。また、暗証番号やパスワードといった無形の認証技術ですら、これらの暗号を知っている必要があるため、亡失して認証できなかったり、最悪のケースでは他人に推測され「なりすまし認証」をされる恐れも。生体認証データは一般的に初期登録時に暗号化されたうえでデータベースに保存されるため、万一データベースから盗難された際にも自分の認証情報が解読されてしまうリスクは低い。
国内海外で注目の生体認証技術
(1)指紋認証
生体認証の代表格としてまず名前があがるのが「指紋認証」だ。オフィスや病院など特定の建物における入退室管理に利用されるほか、パソコンや機密書類へのアクセス制限、個人情報の保存部屋など気密性の高い部屋での入退室管理などに広く導入されている。指紋認証技術を提供するスタートアップ、Liquid社(東京都千代田区)によると、2本の指を使うことで、他人と誤認する可能性は1億分の1まで減少させている[1]。
(2)心電図認証
幼い頃かけっこでゴールしたとき、鼓動が早くなっているのを手と腕の付け根を触って確認した人もいるだろう。2011年にカナダでプロダクト開発を開始したNymi社の「Nymi(ニーミ)」は、人(個体)によって異なる心臓の鼓動を使って生体認証をするウエラブルバンドだ。NFCやBluetooth Low Energyといった最新の通信技術を活用して身の回りのデバイスと常に通信しているため、リストバンドを身につけているだけで自宅や職場の認証装置を通過することができる。ログイン時の二段階認証や支払い時の本人認証といった外部サービスとシームレスに連携することで、高いユーザビリティを実現している。
(3)虹彩(こうさい)認証
人は「眼」を見ると嘘をついていないかわかるという。そんな3つ目は、眼球のなかにある「虹彩」という部分を使って認証する技術だ。例えば、2015年に富士通から発売されたスマートフォン「ARROWS NX F-04G」では、メガネ着用時はもちろん、なんとサングラスを身に着けていても認証できるという[2]。
認証を必要とするサービスが増加していくなかで、UX(ユーザー・エクスペリエンス)に優れる生体認証のニーズは近年ますます高まっている。多種多様な認証技術が私たちの生活に浸透していくなかで、生体認証がどのように活用されていくのか注目だ。
(文/工藤崇)
参考:
[1] Ikeda, M. (2015). 生体認証決済のLiquidが、伊藤忠・電通国際情報・クレディセゾン・東京大学エッジキャピタルから資金調達 http://thebridge.jp/2015/12/biometrics-authentication-startup-liquid-funding The Bridge