最新iPhoneだけじゃない、普及が進む生体認証のトレンド3選
1.市場が急拡大する生体認証
個人の身体的特徴の違いを認証に応用した「生体認証」。認証の際に、カードや携帯すら必要としない利便性の高さや、盗難や紛失の心配がないという安心感、そして二要素・多要素認証の普及などにより、さまざまな分野で活用が進んでいます。米市場調査・コンサルティング会社であるMarketsandMarkets社は、生体認証の世界市場を2015年時点で107億ドル、2016年から2022年にかけて年平均成長率16.8%で成長し、2022年には327億ドルに到達すると予測しています[1]。
2.最新トレンド3選
そこで今回は、今最も注目を集める生体認証技術を3つご紹介します。
◆顔認証
新型のiPhone Xに採用されたことで、今最も注目を集める生体認証の一つ。これまでの指紋認証に代わる顔認証システム「Face ID」では、赤外線を使用して目に見えない3万点以上のドットを人の顔に投射し3Dマップを作成します。暗闇でも問題なく認証し、誤認証は100万回に1回とApple社は自信をみせています[2]。また羽田空港にも先日、顔認証を使った入国ゲートが登場。パスポート内の顔情報と一致すれば10秒で本人確認が行われると言います[3]。さらにNECは来年、顔認証により買い物客個人を特定し自動で決済を行う実店舗を開始することを明らかにしました。顔認証による自動決済の実用化は初めてとのことです[4]。
◆静脈認証
皮膚の内側にある静脈パターンで個人を特定する静脈認証。指をかざして認証する「指静脈認証」と手のひらを使った「手のひら静脈認証」があります。近赤外線で皮膚の内側を映して認証するため、非接触で非常に高い精度を誇ります。銀行のATMや窓口など金融機関での活用が進むほか、入退館/入退室管理などにも広く用いられ、指紋認証や顔認証に並び人々の身近に普及する生体認証の一つとなっています。
◆行動パターン/ライフスタイル認証
通常と異なるロケーションや端末から特定のサイトにログインしようとした場合に、追加の認証が求められることがありますが、これも広義ではこの認証の一つです。まだ実用化されている分野や技術は特定的で、多くは実験・実証段階にあるものの[5]、今後IoT機器やウェアラブルデバイスの情報を活用することで、急速に進化すると期待されている技術の一つです。一人ひとりの行動パターンやライフスタイルから個人を認識し、IDやパスワードの入力だけでなく、人々が意識する“認証”という行動すらなくしてしまう可能性を秘めています。
3.生体認証における利便性と安全性
新型iPhoneは、その人気のため多くの人やメディアが、Face IDの精度を試す実験をしており、利便性についても意見がさまざまに分かれています。これはすべての認証システムについて言えることで、安全性を高めるために“怪しいものはすべて拒否する”とすると、本人を誤って拒否してしまう「本人拒否率(FRR: False Rejection Rate)」が上がってしまいます。一方で利便性を求めると、他人を誤って認証してしまう「他人受入率(FAR: False Acceptance Rate)」が高くなってしまいます。他人を受け入れてしまう誤認証は非常にリスクが高いため、できるだけ低く抑えたいものの、誤認証ばかりを気にすると確認のために別の手段による追加認証が必要となり、ユーザーにとって使いづらい結果に。各企業は極力上記のようなトレードオフを解決するためのさまざま対策を強化しており、財布も携帯も持たずに手ぶらで外出し買い物ができる……そんな未来も近づいています。
(文/星野みゆき 画像/© sp3n – Fotolia)
参考:
[1] MarketsandMarkets. (2017). Biometric System Market worth 32.73 Billion USD by 2022
http://www.marketsandmarkets.com/PressReleases/biometric-technologies.asp
http://japanese.engadget.com/2017/09/12/iphone-x-face-id-100-1/ [3] 産経ニュース. (2017). 羽田空港に「顔認証」の入国ゲート導入 約10秒で終了
http://www.sankei.com/life/news/171018/lif1710180036-n1.html [4] ニュースイッチ. (2017). NECの顔認証いよいよ実店舗に。ビザが採用
https://newswitch.jp/p/10987 [5] マイナビニュース. (2017). 東京大学、ID・パスワードに代わる「ライフスタイル認証」の実証実験
http://news.mynavi.jp/articles/2017/01/27/life_style_certification/