日本の安全神話は本当!? 犯罪率調査から見る近年の傾向

日本の安全神話は本当!? 犯罪率調査から見る近年の傾向

日常出勤する大手町のFinTechシェアオフィスは、日本国外から訪れる来客も多い。日本はどうですかと尋ねると、街の持つ清潔さや四季に対する誉め言葉と合わせて、「日本は安全な国」という言葉が出てくる。日頃よく耳にする、日本の治安の良さに対する賛辞は、果たしてこの本当か。客観的に示すのが「犯罪率統計」だ。

1. 犯罪率統計における日本の立ち位置

ここにOECD諸国における「犯罪被害者数の対人口比」という統計がある[1]。近年における犯罪発生状況を概観できるデータとして非常に興味深い。2005年と2000年、2つの異なる時点における「犯罪被害者の対人口比」を国別に比較している。たとえば2000年に犯罪率改善を達成し、以降継続している場合は、赤点の下に紫の棒グラフが位置することになる。

オーストラリアやスウェーデンといった国々は、2005年時点における犯罪率は平均値よりもやや上であるものの、2000年から2005年にかけて大幅に犯罪率の大幅な改善がみられる。同様に、イタリア・フランス・スペインといった2005年時点における犯罪率が低い国々においても、2000年以降の5年間で犯罪率が飛躍的に改善されている。そして日本はというと、2005年の時点で9.9%、また2000年の時点では11.9%と、他の先進国と比較しても珍しく15年間「犯罪率の低い国」という立ち位置を維持していることが読み取れる。

日本の安全神話は本当!? 犯罪率調査から見る近年の傾向図表出展: OECD. (2009). OECD FACTBOOK 2009

仮に数年間、限定的に犯罪率が低くなっても「あの国は安全だ」という意識面での浸透は難しい。日本は長きに渡り犯罪率の低い状況を「維持」することで、安全な国という評価を確立しているといえる。

2. もうひとつの指標である「検挙率」も2002年以降上昇の一途

犯罪発生率とともに重要であるのが、発生した犯罪の犯人を特定した割合。統計においては、「犯罪検挙率」だ。検挙率も2002年から上昇に転じ、2006年からは高い位置で維持している。2015年の最新統計では刑法犯総数に対して32.5%を記録している[2]。一見すると3割という数字は低いように感じるが、この検挙率は、殺人や暴行などの重犯罪から自転車窃盗などの軽犯罪まですべて含めたものとなっている。そのため、前者の検挙率を維持しているからこそ、実生活における「警察に対する信頼感」が醸成されているといえるだろう。

これらの統計から見ても、長年をかけて培ってきた「日本は世界各国と比較しても安全な国」という評価は今後も継続していくことだろう。あと3年で東京五輪。「治安が良く安全な国」として、オリンピック選手・訪日観光客を迎えたいものだ。

(文/工藤崇)

参考:

[1] OECD. (2009). OECD FACTBOOK 2009

[2] 法務省. (2016). 平成28年版 犯罪白書