指紋だけじゃない!? 手ぶらで斬新な認証を実現する新技術3選

指紋だけじゃない!? 手ぶらで斬新な認証を実現する新技術3選

指紋・心電図・そして虹彩。このような、自分の身体的特徴(生体器官)を使った最新の認証技術を前記事「自分の体が認証手段に!? 注目の生体認証3選」にて紹介した。各個人の身体的特徴の違いを認証に応用したこれらの技術は「生体認証」と呼ばれ、利用者にとって利便性が高いことから活用シーンが増加している。

利用者に余計な負担をかけずに認証をする技術は、世界各国でさまざまな研究開発が進められている。前回記事に引き続き、今回は世界各国で普及が進むユニークな認証方法を紹介する。

1. 顔認証

虹彩や静脈といった身体の1部分ではなく、顔全体のレイアウトなどをもとに認証を行う技術として最近注目を集める顔認証。顔全体をカメラで撮影して、各パーツの相対位置や大きさや形状的特徴などから本人かどうかを判別する。国内でも顔認証を応用した興味深い事例として、リカオン株式会社が提供する徘徊防止システム「LYKAON」がある。介護施設等にカメラと共にシステムを導入することで、施設に所属する高齢者の徘徊対策として活用されることが期待されている。これから超高齢化社会を迎える日本にとっては、高齢者と介護世代の「共存」は大きな課題。認証の正確性や速さの確立されたサービスは社会の需要をつかみ、またたく間に民間・行政のあいだに浸透していくのだろう。

2. 耳認証

意外に思われるかもしれないが、実は耳を使った認証技術も開発が進められている。2016年3月にNECが新たに発表した耳認証は、ウェアラブル時代おけるユーザビリティの高い認証技術としてCEATEC Japan 2016においてもメディアの注目を集めるなど、大きな話題となった。イヤフォンから音を流し、耳穴からの反響音をイヤフォンに備え付けられたマイクで収集し、耳の形状によって各人異なる音響特性を1秒以内で認識する。イヤフォンという密閉空間において、外的環境の影響を排除したうえで複数の信号成分を組み合わせて分析することで、99%以上の認証制度を実現できる[1]。

3. 歩容認証

身体的なパーツではないが、「歩き方」も重要な認証ツールとなる。大阪大学産業科学研究所所長の八木康史教授がリードする研究では、カメラ等のセンサーに写った人物の歩行の様子から、個体を判別する[2]。歩容認証と呼ばれるこのような技術は、セキュリティ対策としての認証にかぎらず、犯罪捜査による犯人の足取り確認に活用することが期待されている。警察庁が主導する犯罪捜査において既に導入実績があり、犯人逮捕へと繋がったケースもあった[3]。今後、このような広域監視にも活用できる生体認証の普及によって、犯罪捜査の手法は劇的に変化することが予測される。

このように「生体認証」という言葉ひとつをとっても、徘徊対策から犯罪捜査に至るまで、さまざまな場面での活用が進められている。言い換えれば、活用の幅が拡大していくことによって、それぞれの認証技術が利用者の日常へ浸透していくのである。

(文/工藤崇)

[1] 日本電気株式会社. (2016). NEC、人によって異なる耳穴の形状を音で識別する生体認証技術を開発 http://jpn.nec.com/press/201603/20160307_01.html

[2] 日本学術振興会. 「歩く姿で個人がわかる「歩容認証」:未来科学捜査への期待」 http://www.jsps.go.jp/seika/2014/vol2_008.html

[3] 與座ひかる. (2016). 顔認証より高精度!? 「歩き方」で個人を特定できる「歩容認証」とは http://monoist.atmarkit.co.jp/mn/articles/1507/17/news037.html MONOist