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お知らせ
全国の電力網を支える送配電事業者10社が保有する契約情報を活用した 金融機関向けの新KYCサービス「Grid Data KYC」を提供開始
2025年9月18日
株式会社カウリス
不正アクセス検知サービスを提供する株式会社カウリス(本社:東京都千代田区、代表取締役:島津 敦好、以下カウリス)は、全国の一般送配電事業者が保有している電力契約者情報を活用した、新たな本人確認支援サービス「Grid Data KYC」の提供を本日より開始いたします。

本サービスを活用することで、金融機関は新規口座開設時における本人確認の精度を高めると同時に、既存顧客の継続的顧客管理の業務を効率化し、顧客の本人確認(Know Your Customer、以下KYC)に要するコストを大幅に削減することが可能になります。
■Grid Data KYC誕生の背景
1. 金融犯罪における顧客情報の不正利用が増加
金融機関における新規口座開設や金融サービスの新規入会において顧客情報を登録する際、偽造免許証や空き家の住所等の不正利用が増加しており、より厳格かつ効率的な本人確認手段が求められていました。
2. 金融機関が義務付けられている「継続的顧客管理」にかかるコストの増大
金融機関には、AML(アンチマネー・ローンダリング)の一環として、保有している既存顧客の本人情報を定期的に確認し、不正利用を防止する「継続的顧客管理」が義務付けられています。継続的顧客管理は電話やハガキを用いた本人確認作業が求められており、金融機関や金融サービス事業者に多大な人的・金銭的コストがかかっていました。
3. 電力契約情報を活用した革新的な本人確認サービスの開発
こうした背景を踏まえ、不正アクセス検知サービス「Fraud Alert」を提供するカウリスは、より安全で信頼性の高い金融インフラの構築のために、より精度の高い顧客情報として電力契約情報を用いた本人確認サービスの開発が必要であると考えました。
そこでカウリスは、電力契約情報(氏名・住所・電話番号等)の金融機関による照合利用に対する個人情報保護法上の制限を変革すべく、2019年3月に「規制のサンドボックス制度」を活用した先行実証プロジェクトを開始し、2024年4月にはグレーゾーン解消制度を通じて経済産業省・個人情報保護委員会・国家公安委員会の3省庁より電力契約情報の金融機関による照合利用の適法性について正式な回答を取得しました(※1)。
■サービス提供にあたり、全国の一般送配電事業者と業務提携
グレーゾーン解消制度を通じて、電力契約情報の金融機関による照合利用の適法性に係る関係当局の回答を取得した後、カウリスは以下に掲げる全国10社の一般送配電事業者と業務提携を予定しております。
提携先の一般送配電事業者一覧
・北海道電力ネットワーク株式会社
・東北電力ネットワーク株式会社
・東京電力パワーグリッド株式会社
・中部電力パワーグリッド株式会社
・北陸電力送配電株式会社
・関西電力送配電株式会社
・中国電力ネットワーク株式会社
・四国電力送配電株式会社
・九州電力送配電株式会社
・沖縄電力株式会社
本提携により、全国約8,600万世帯分の電力契約情報を、本人確認を目的として、金融機関が保有する顧客情報と照合することが可能になりました。
■Grid Data KYCのサービス概要
金融機関から提供される新規口座開設申込者の情報(姓、名、住所、電話番号など)を、一般送配電事業者が保有する電力契約情報と照合します。この照合結果から、以下の情報を金融機関に返却します。
住所一致の確認: 申告された住所に電力契約が存在し、その名義が申込者と一致しているかを判定
名義不一致の確認: 電力契約の名義人と申込者の名前が異なる場合を特定
空き家判定: 申告された住所に電力契約が存在しない(=居住実態のない)場合を検知

※本サービスは、取得する電力契約情報は本人確認(KYC)を目的とした照合利用に限り使用され、目的外利用は一切行いません。また、個人情報の取り扱いには最大限の配慮を行い、厳格な情報管理体制のもと運用されます。
■本サービスを通じて金融機関が得られるメリット
Grid Data KYCを導入することで、金融機関は「新規取引時の本人確認の精度向上・不正な新規口座開設の防止」を図ることができます。
具体的には、申込者が申告した住所に実際に居住している「実在性」を、Grid Data KYCの照合結果によって高精度に確認できるようになり、AMLにおける最も基本的な本人確認の精度が飛躍的に向上すると同時に、なりすましや虚偽の申込情報に基づく不正な新規口座開設を高い確率で防止することが可能となります。
■実証実験に参加した金融機関(UI銀行)のコメント
UI銀行は、本サービスを活用して新規開設口座と既存口座の両方に対して、電力契約情報データとの照合を実施しました。UI銀行において、開設後1年未満の口座のうち、警察や弁護士から凍結要請があった口座と電力契約情報データの照合を行ったところ、「空き家」が8.4%、「電力の契約者と口座名義人の姓名ともに不一致」が26.0%と、活用の有効性を示す結果となりました。これまでも、不正利用を目的とした口座開設の防止に向けた施策を講じてきましたが、今回の実証実験により、なりすましによる口座開設を高い精度で検知することができるということを確認することが出来ました。今後におきましても、実証実験の結果を踏まえ、継続的顧客管理の強化と効率化を進めてまいります。
■株式会社カウリス 代表取締役 島津敦好のコメント
本サービスの実現にあたっては、金融庁、警察庁、経済産業省 資源エネルギー庁、個人情報保護委員会、内閣官房をはじめとする関係当局の皆様、そして全国の一般送配電事業者の皆様、さらには実証実験にご協力いただいた金融機関のお客様に多大なるご支援を賜りました。その結果、電気事業法の改正へと結実し、本日のリリースに至ることができました。ご尽力いただいた全ての皆様に心より感謝申し上げます。
カウリスは「Grid Data KYC」の提供を通じて、金融機関における顧客管理・本人確認業務を抜本的に効率化すると同時に、金融犯罪の抑止に貢献し、日本の金融インフラをより安全で強固なものにしてまいります。
カウリスは、複雑化する金融犯罪から国民の皆さまの金融資産を守るため、今後もより良いサービスの開発・提供を続けてまいります。
※1.グレーゾーン解消制度の回答受領に関する弊社プレスリリース
https://caulis.jp/news/2024/04/grayzone
■カウリス会社概要
会社名:株式会社カウリス
代表取締役:島津 敦好
本社所在地:東京都千代田区大手町1-6-1 大手町ビル4F FINOLAB
設立日:2015年12月4日
資本金:3億5,278万円
事業内容:不正アクセス検知サービスの開発・提供
URL:https://caulis.jp/